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岩田榮吉の作品

 作品点描(13)
  《マルレーヌ》 戦争がもたらしたもの


シルクハットに燕尾服、タバコをくゆらす妖艶な男装の麗人といえば、映画『モロッコ』(1930年公開)でゲイリー・クーパーと共演したマレーネ・ディートリッヒですが、そのフランス語読みがマルレーヌ、岩田の《マルレーヌ》もまさにディートリッヒです。

よく知られているように、マレーネ・ディートリッヒ(1901年~1992年)は、ドイツ(ベルリン)生まれながら反ナチスを貫いた女優・歌手です。ドイツ映画『嘆きの天使』や前述のハリウッド映画『モロッコ』、『上海特急』などへの出演で地歩を築いた後、1939年にはアメリカの市民権を得、1943年からはアメリカ軍の機関に属してヨーロッパ各地を巡り、前線兵士の慰問活動を行いました。ドイツ語でも英語でも兵士たちに口ずさまれていた『リリー・マルレーン』を取り上げ、慰問活動でも対独放送でも歌い、彼女の持ち歌となりました。

戦後、彼女は、アメリカでは「大統領自由勲章」を、フランスでは「レジオンドヌール勲章」を受け、その功績が高く評価されましたが、生国への思いは大きく、1960年にはドイツ公演を実現させます。しかしそこでは拍手をかき消さんばかりの嘲笑と「裏切り者」の罵声を浴びることになったのです。

《マルレーヌ》は岩田にしてはサイズの大きな作品(40号)です。マルレーヌは物憂げに座っています。信ずるところにしたがって欧米を駆け巡り、すでに演技に歌に評価を受け成功を手中にしたかに見える彼女ですが、なお光の入る窓に向かってはいても、その心底には自らに対しても隠しきれない傷があるようです。《マルレーヌ》は岩田にしては直截に戦争に対する思いを描いた作品です。(人物点描(15)~戦争がもたらしたもの 参照)


《マルレーヌ》 1976
《マルレーヌ》 1973年

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