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岩田榮吉の作品

 作品点描(15)
  ポルトガルとスペイン(その2:《ルイブラス》)


「ルイブラス」は16世紀の最盛期スペインを舞台とするヴィクトル・ユゴー(1802年~1885年)の戯曲で、主人公の名前がそのまま戯曲名になっています。1839年の上演に際しては、メンデルスゾーンが《序曲リュイ・ブラ-ス》を作曲し、また、1948年には、ジャン・コクトーの脚本、ジャン・マレー、ダニエル・ダリューらの出演によって映画化されています。岩田は、ダニエル・ダリューのファンでもあったので、《ルイブラス》(1972年・画集No.50)がこれらの映画や戯曲に想を得ていることは間違いないと思われます。

この戯曲…、ルイは平民出身で、侯爵ドン・サリュストの部下ですが、王妃に恨みをもつ侯爵の策謀の手先として貴族ドン・セザールになりすまし、王妃に接近して不倫の罪に陥れるよう仕向けられます。ところが、ルイは王妃と相思相愛の仲となり、王妃のため、逆に侯爵を殺害したうえ自殺して果ててしまいます。王妃はルイの真情を知り、その死を悲しみます。(コクトーの脚本ではかなり潤色され、ジャン・マレーの「大冒険活劇」風ですが。)

この戯曲は16世紀のスペインが舞台とはいいながら、そのまま史実や世相が反映されている訳でないことはもちろんです。王妃のモデルは、ハプスブルグ家最後のスペイン王カルロス2世の2度目の妃マリア・アンナ(1667年~1740年)であるといわれているうえ、ユゴー流の7月革命後のフランス社会批判がちりばめられてもいます。

岩田の《ルイブラス》は「太陽の沈まぬ国」スペインを描いています。中央に大きく位置を占めているのは「振り香炉」、キリスト教会の礼拝(炉儀)に用いられ、画面上から下がっている金属製の鎖で吊り下げられます。キリスト教(カトリック)布教は海外進出の大義です。香炉の脇には王冠、ハプスブルグ家はローマカトリック教会の守護者をもって任じていました。しかし現実の推進力となり拡大を加速したものは、言うまでもなく宝石箱とワインで表される独占的交易の利益です。そして2枚のカード。上はクイーン、下はおそらくルイブラスのジャックです。これら強い光が当たっている周囲は、逆に闇に沈んでおり、暗示的です。


《ルイブラス》 1972年
《ルイブラス》 1972年


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