本文へスキップ
岩田榮吉の世界

岩田榮吉の作品

 作品点描(26)
  岩田の油彩画技法 (その1 アピュイ・マン)


「飯沢:
…制作中の写真を拝見したら、描くとき支え棒をお使いになっていますね。あの棒は日本の画材屋さんではあまりお目にかかりませんが、フランスでは何と言うのですか。

岩田:
アピュイ・マン(appui-main)といいます。つまり腕木という意味ですね。フランスでもあまり売っておりませんが。」

ー 飯沢匡との対談における岩田の発言 「みづゑ1971年1月号」所収


本サイト「人物点描(23)~アトリエ その2」の写真「岩田のアトリエ(2)」で手前に立てかけてある棒が、そのアピュイ・マンです。また、同じく写真「岩田のアトリエ(3)」がそれを使用して制作しているところです。先端はゴムやコルクで包まれキャンバスが傷まないよう、また、木枠に掛けられるよう出張りがついているものもあり、これで1点を固定し、もう1点を利き手でないほうの手足などで支え、絵筆を持った利き手を載せて、細部の描き込みを行いやすくします。

今日では、マールスティック(英:mahlstick)などと称し、日本でも腕鎮(ワンチン)と称して画材店や通販でも販売されていますが、岩田の時代にはありあわせの材料で自作していたようです。岩田は当時忘れ去られていたフェルメールの時代の技法書などの研究を通じてアピュイ・マン(オランダ語では maalstock)を知ったのかもしれません。実際、フェルメールの《絵画芸術》には、これを用いて制作するフェルメール自身の姿(?)が描かれています。後ろ向きにキャンバスに向かっている画家は、maalstockに絵筆を持った右手を載せ、モデルのかぶる月桂冠を描き始めたところなのです。


ヨハネス・フェルメール 《絵画芸術》 1666年~67年頃 油彩/キャンバス 120cm×100cm ウィーン美術史美術館
ヨハネス・フェルメール 《絵画芸術》 1666年~67年頃 
油彩/キャンバス 120cm×100cm ウィーン美術史美術館


作品点描(27)~岩田の油彩画技法 (その2 下塗りと下描き)へ進む
作品点描(25)~《ヴィラ・スーラの緑の部屋》へ戻る

ナビゲーション

バナースペース