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岩田榮吉の作品

 作品点描(28)
  岩田の油彩画技法 (その3 溶剤と絵具層形成)


キャンバス地塗りや下塗りとともに重要なのは、顔料を溶き合わせ絵具とするための溶剤(medium)です。
15世紀ころにネーデルランドで確立されたといわれる伝統的油彩画の技法では、空気に触れると硬化する「乾性油(アマニ油など)」を主な溶剤として顔料を溶き合わせて絵具とし、「色相の透明感と光沢」、「タッチを変えて様々な表現が可能である」、「保存性に優れる」という特長があります。しかしながら、絵具が乾かない(=硬化しない)うちに塗り重ねすると色に濁りが生じたり、画面にひび割れを起こすため、また、筆さばきが重くなるため、短時間で一気に描き上げるというようなことは難しく、さらに、光沢を抑えた仕上げにはし難い面があります。
これらは乾性油の使用を減らすことと、揮発性の溶剤を加えることで緩和・抑制できますが、画面の強固さは損なわれ保存性が低下します。「油抜き」した油絵具の使用や、揮発性溶剤を多く用いたいわゆる「おつゆ描き」では画面の剥離を生じやすく、長持ちする絵にはならないのです。様々な工夫の必要に迫られる所以です。

岩田もこの点について、次のように言います。

「岩田:
…現在は、日光にさらして、濃度が増したアマニ油にテレピン油を混ぜて使います。

飯沢:
それで乾きは早いですか。

岩田:
干したアマニ油は非常に具合がいいですね。乾きもいいし堅牢だし。これは友人から聞いた話ですがファン・アイクの例の有名な《神秘の子羊》を修復した人がこれを使ったということです。…濃度が増したアマニ油の欠点といえば、これは、普通のリンシード・オイルと同じで、暗い所に長い間絵を放置しておくと、黄色っぽくなる事です。しかし、明るいところに出せば、又この黄色は消えます。私の使っている材料で欠点らしい欠点といえば、まあそれ位ではないかと思っていますが、まだまだ勉強しなければならないことが沢山あります。」

ー 飯沢匡との対談における岩田の発言 「みづゑ1971年1月号」所収


ファン・アイク兄弟 《ヘントの祭壇画》より《神秘の子羊》 15世紀
油彩/板 134cm×238cm シント・バーフ大聖堂


第二次大戦中ナチスに押収され、他の押収品とともにオーストリアの岩塩坑に隠匿されていたが、1946年帰還し、当時最新の科学的調査と修復が行われました。


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