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岩田榮吉の作品

 人物点描(6)
  1958年のイタリア旅行(その1)


1957年のオランダ旅行に続き、1958年、岩田は2度にわたってイタリア旅行に出ます。
第1回目は3月、同行者はオランダ旅行の際に大きな示唆を得た岩崎力氏(人物点描(3)~1957年暮のオランダ旅行・その1 参照)。そして第2回目は7月、同行者は版画家の斎藤寿一氏(1931~1992)とパティシエの高田壮一郎氏(人物点描(13)~長谷川潔との交流 参照)でした。

「…まもなくスイスとイタリーの国境シムプロンのトンネル(世界最長)を通る。少し前より言葉はドイツ語に変る。ほんの二時間ほどの間にこれ程言葉が変るとは、ヨーロッパとは不思議なところなり。」
ー岩田の日記より


列車で向かえばほんの二時間ほどの間に言葉がフランス語・ドイツ語・イタリア語と変る。同じキリスト教徒とはいえ、それぞれの間で度々衝突や葛藤もあった。しかし、そこにいる人々はロマネスク、ゴシック、バロックなどなど言葉を超えて芸術様式や文化を共有してきた。本当にヨーロッパとは不思議なところだ…と岩田は言います。そして、先のオランダ旅行での見聞とも対比し、この不思議に迫るヒントを得ることがイタリア行きのテーマだったように思われます。

岩田の日記は、その行程や途上での出来事、街の様子、同行者との会話などについてはほとんど触れず、記述のほぼすべてが個々の作品についてで、日記というより鑑賞記録です。しかし登場する作家・作品から、ミラノ、フィレンツェ、ヴェネチア、ローマ、アッシジなどを訪れ、中でもフィレンツェは2度の旅行のいずれでも相当の時間をかけて見ている様子が窺われます。末尾の表に、イタリア旅行中の岩田の日記に見られる作家と作品、コメントの要旨をまとめました。


《ミケランジェロ広場》 1958
《ミケランジェロ広場》 1958年

フィレンツェの町並みを一望できる丘の広場からのスケッチです。


《ファブリコッティ荘》 1958
《ファブリコッティ荘》 1958年

フィレンツェで岩田が宿泊した元貴族の別邸のスケッチです。


イタリア旅行中の岩田日記に登場する作家・作品

(その1:☆印はとくに記載量の多いもの)

 画家/作品(制作年・注記) 岩田のコメント(一部要旨)
レオナルド・ダ・ヴィンチ
 最後の晩餐(1495~98) 
たくみな構図 素朴な描写
シモーネ・マルティーニ 
 受胎告知(1333) 
  
 
色美しく品格ある形の連絡
 
 ロベール・ダンジューに王冠を授ける
 トゥールーズの聖ルイ(1317)
豪華・荘厳 バッハをビヴァルディがオルガンでひいたよう
アントニオ・デル・ポライウォーロ
 ☆婦人の肖像(1475頃)
永年あこがれの画 微妙なトーン、フジタのような線
ピエロ・デラ・フランチェスカ  
バルトロメオ・モンターニャ  
ルーカス・クラナッハ イタリアで見るといじけた感じが…
ジョヴァンニ・ベリーニ
 ☆ピエタ(墓の中の死せるキリスト 1460)
 聖なる寓意(1490)
描写のきびしさ、構成の厳密さ
北方系とはまた異なる細密
フランチェスコ・グアルディ 美しい、が、美しいのみ
ミケランジェロ・ブオナローティ
 ピエタ(1498~1500・彫刻)
 
キリストの伸びた手のねじれの強さ
 システィーナ礼拝堂天井画 巨大な人間像が胸をうつが、純粋美学からはずいぶんおかしな「アブナ絵」
パオロ・ウッチェロ
 馬
遠近法の追求で知られるが…道具立てがつまらない
ジョット・ディ・ボンドーネ
 荘厳の聖母(1310頃)
毅然と気高し しかし形もトーンもうまいとはいえず、わからない絵
ドゥッチョ・ディ・ブオニンセーニャ
 ルチェライの聖母(1285)
色のニュアンスによる深み、衣服のしわ
ジョルジョ・ヴァザーリ
 ロレンツォ・イル・マニーフィコの肖像(1534頃)
あのヴァザーリだが、いかにもあやしい 色ふゆかい
フラ・アンジェリコ
 聖母戴冠(1434~35頃)
 ☆受胎告知(1437~46頃)
静かなたゆたうような幻惑 もうこうなるとトーンがどうの奥行きがどうのというものではあるまい
ピエトロ・ヴァンヌッチ・ペルジーノ
 玉座の聖母子(1493)
 
線がよい ただし形は…
 システィーナ礼拝堂壁画
 (モーセのエジプト脱出 他2点)
かたいが好ましい
アルブレヒト・デューラー
 東方三博士の礼拝(1504)
 父の肖像(1490)
 梨の聖母(1526)
父の肖像の目鼻口 ルーブルの自画像に匹敵
ハンス・ホルバイン
 リチャード・サウスウェル卿の肖像(1536)
確かなデッサン この画家の傑作
レンブラント・ファン・レイン  
ラファエロ・サンツィオ
 自画像(1506頃)
 
黄・こげ茶のトーンこよなく美し
 ☆キリストの埋葬(1507)  構図の天才 
 キリストの変容(1518~20)   
 ☆アテネの学堂(1509~1510・ヴァチカン宮壁画)  油絵よりフレスコの方が好み 
 ☆(デッサン) 油絵と異なり力強くいきいきしている 
アンドレーア・デル・サルト
 ☆自画像(1528~30)
ハーフトーンの美しさ格別 涙出る
ピーテル・パウル・ルーベンス
 自画像(1618/28)
自画像は数々あれど、さすがルーベンス
アンゲリカ・カウフマン
 自画像(1787)
なかなか味のある技法 
ジャック=ルイ・ダヴィッド  
ウジェーヌ・ドラクロア
 自画像(1840頃)
他のフランス画家の肖像はよくないがこれはなかなか
エリザベス・ヴィジェ=ルブラン
 自画像(1790)
細部きれい
カミーユ・コロー 不透明な絵具のつきなかなかよし
ヘラルト・ダウ
 自画像(1658)
オランダと同じ、ガイコツ窓際
フィリッピーノ・リッピ  
マサッチオ(トンマーゾ・ディ・セル・ジョヴァンニ・ディ・モーネ・カッサーイ) 
 キリスト磔刑(ピサの祭壇画の一部)
 アレキサンドリアの聖カタリナの生涯(サン・クレメンテ教会壁画)
 十字架刑(サン・クレメンテ教会壁画)
 
 
キリストの首のつき方が?
 
サンドロ・ボッティチェッリ
 聖母子と天使(1468~1469)
 
顔少し調子がとびかかっている
 モーセの生涯の出来事 ほか2点
 (システィーナ礼拝堂壁画)
春やヴィーナスより精神がヨロシイ 
ミケランジェロ・メリージ・ダ・カラヴァッジョ
 パラフレニエーリの聖母(蛇の聖母・1605)
 
 
背景の真っ黒さかげんは… 
 病めるバッカス(1593~1594)   
 執筆する聖ヒエロニムス(1605~1606)  布の描写 しわが説明(的) 
 ゴリアテの首を持つダヴィデ(1609~1610)  空間が感じられない 
ダフィド・テニールス 
アントニオ・アッレグリ・ダ・コレッジョ
 ダナエ(1531頃)
 聖カタリナの神秘の結婚(1518頃)
品がよい 
ティツィアーノ・ヴェチェッリオ
 聖愛と俗愛(1514)
 
青 黒 金
 
ソドマ(ジョヴァンニ・アントニオ・バッツィ)

 聖カタリナの神秘の結婚(1539~1540)
 ピエタ(1540)
何か表現したいという欲望がよくわかる
品が悪いながら…技法なかなか 
フランシスコ・デ・ゴヤ
 マリア・ルイサ
 
衣装の輝きは神技に近し
注:画家名、作品タイトルおよび制作年は、岩田の記載に関わらず、今日一般に用いられているものとした。

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