岩田榮吉の作品
作品点描
「王様」(その2)
岩田の「王様」は様々なオブジェとともに登場し、様々な側面を見せます。とりわけ重要な意味を持つオブジェは、「本」、「地図」、「ピッチャー」、「大理石の立方体」などです。まず「本」から見てみましょう。《公爵》 (画集No.39)の画中の2冊の本は背表紙に「フランスの歴史」、「いなかもの」とあります。《書棚(トロンプルイユ)》(画集No.52)では「ポエジー」、「版画」、「フランス・ハルス」、「レンブラント」などの文字を読み取ることができます。
「地図」は、《公爵》(画集No.105)に登場しますが、「王様(公爵)」はフランスの上に立っています。「ピッチャー(またはデカンタなど)」は、
《王様と酒壺》(画集No.100)にも登場していますが、ワインが満たされています。そして「大理石の立方体」、これは文鎮として用いられているもので、古今東西の詩歌や知識が散逸し消滅してしまわないよう押さえる働きをしています。
明治以降、「ヨーロッパとは何か」という問いは西欧文化に関わる日本人にとって大きな課題であったと言えるでしょう。岩田も例外ではありません。そしてその一つの答えを、この人形に託したようです。
《公爵》 1970年 (画集No.39)
《書棚(トロンプルイユ)》 1974年 (画集No.52)
《公爵》 1980年 (画集No.105)