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岩田榮吉の作品

 作品点描
  込められた「意味」


岩田が傾倒していた「17世紀オランダの絵画」そして注力した「静物画」・「細密な描写」と並べてみると、岩田の静物画においても、描かれたモチーフそしてオブジェのひとつひとつにそれぞれ何らかの意味が盛り込まれているのではないかと考えたくなります。何といっても17世紀の静物画には道徳的寓意が盛りだくさんに詰まっているというのが通り相場です。

「静物画」というジャンルがオランダ・フランス・スペインなどで確立されたのは17世紀、しかしその後の「静物画」の展開を見ると、ふんだんに込められていた意味や物語性が失われていき、モチーフの構成あるいは眼前の事物を画面に写し取ること自体の追求が前面に出てきます。エポックはセザンヌ、行き着いた先のひとつが感情を排した「ハイパーリアリズム」と言えるかもしれません。

そうした流れに沿って岩田の静物画を見ると、物語性とモチーフ構成の両面を包含しながら、必ずしも17世紀流の表象に捉われず、また、感情を排した精細からも一線を画していることがわかります。岩田は、オブジェの選択、その配置、光線などにこだわり、演出した世界を細密に描いているのです。評論家のレイモン・シャルメは次のように書いています。

「(岩田は、)17世紀のオランダの画家の様に、丹念に描写し柔らかなニュアンスの色で精緻でデリケートな静物を構成する。そこでは美しい装幀の書物や精密な時計、鏡、鍵、トランプ、昔の器物、絹のドレスを着た人形等が静かに対話している。思いがけなくシュール・レアリスムに近い響きをもつこともあるが、常に柔らかで調和がある。」

−『岩田榮吉作品集』(第1回個展−1970年東京日本橋三越−)図録より


謝肉祭 1977年
《謝肉祭》 1977年


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