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岩田榮吉の作品

 作品点描
  鏡の利用(その2)


自画像の制作にあたり、岩田は鏡に映る逆像をそのまま描くのではなく、左右が逆になると不自然に見える部分を修整しています。しかし修整を加えたことによって全体が不自然になっては何にもなりません。そのための確認には再び鏡を使います。自画像の制作に限らず、岩田は制作途中の画面を、小さな手鏡1枚に映して、あるいは2枚を合わせ鏡のように使って度々確認しています。

鏡を使って作品を検証する方法は、今日ではむしろデザイナーなどの間に広く知られていると聞きますが、そのルーツはルネサンス時代のアルベルティ「絵画論」まで遡るようです。同書においてアルベルティは、「巧く描かれたものは鏡のなかでは大いに優雅さを増すものであり、…絵画のあらゆる欠点は、鏡に映ると歪んでいることがいっそうはっきりするものだ。」として、鏡は「名裁判官」だと述べています。(三輪福松訳、1971年中央公論美術出版刊による。)

アルベルティの時代15世紀ころの鏡は、小型サイズ磨きガラス1枚1枚の裏面に錫箔と水銀でアマルガムメッキするという製法ですから、高価なうえ、像の歪み、多少の明るさ不足は免れませんでした。20世紀以降の今日、日常広く使われている鏡は、平滑な表面と均質な厚みのガラス板の裏面に硝酸銀などを基剤とする溶液を吹付け化学メッキする機械生産品ですから、一層身近にあって有能な「名裁判官」となるはずです。


鏡を使って作品の検証をする岩田。左は2枚使用 鏡を使って作品の検証をする岩田。右は1枚使用。
鏡を使って作品の検証をする岩田。左は2枚使用、右は1枚使用。


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