岩田榮吉の作品
作品点描
作品とタイトル(その2 《三つの時》《人形と鳥》)
岩田の作品とそのタイトルを見ると、作品の一部となって作者の表現を補完し訴求する役割を担うタイプのものがあります。
《薔薇の貴婦人》(画集No.31、本サイト作品点描 参照)、
《シバの女王》(画集No.90、本サイト作品点描 参照)などはその典型ですが、一見してわかりにくいものも含まれています。
その一つの例は、《三つの時計》(画集No.107)という作品です。実はこの作品、キャンバス裏に岩田本人が《三つの時》と書いているので、画集の作成時に何らかの原因で誤記したものと思われます。確かに日時計、砂時計、そして懐中時計という「三つの時計」が描かれているので、「主なモチーフ・画題をタイトルにした」かに見えます。しかし《三つの時》が本来のタイトルだとすると、描かれたモノ三つがそれぞれ異なる意味を持った「時」を表わし、この作品のテーマはそれらの「時」の織りなすものにあることが浮び上ってきます。
もう一つの例は、《人形と鳥》(画集No.78)です。
本サイト作品点描の通り、この作品のテーマは「長谷川潔先生と私(岩田)」であり、タイトルはそれぞれのシンボルを表しています。人形と鳥という「主なモチーフ・画題をタイトルにした」タイプであることは確かですが、そこにとどまるものではない意味も含まれているのです。
《三つの時》 1980年
《三つの時》裏面