岩田榮吉の作品
作品点描
トロンプルイユ(その2)
「そのグループ(アンリ・カディウ率いる「パントル・ド・ラ・レアリテ」)には人物とか風景、つまり額縁に入れる普通の絵を描いている人たちと額縁に入れないトロンプ・ルイユ式の絵を描いている人たちと二通りおります。私は普通の額縁に入る絵を出品しておりましたが、カディウさんが一度どうしてもトロンプ・ルイユをやってみろと言うので、数年前からぼつぼつ始めました。最初はちょっと抵抗がありましたが。」
− 飯沢匡との対談における岩田の発言 「みづゑ1971年1月号」所収
トロンプルイユへの取組みは始め少々抵抗があったと岩田は言います。どういうところに抵抗があり、どうしてそれでも取組むことにしたのでしょうか。
「(トロンプルイユには本来一種のいたずらっ気が)勿論あるでしょうね。…しかし最近フランスでトロンプ・ルイユをやっている人たちには騙すという意識が非常に強いのではないでしょうか。」
「18世紀までのトロンプ・ルイユは目を騙すということが第一目的ではなかったように思います。…絵として非常に良いものを作ろうとしたのではないかと思います。」
− 同上 岩田の発言
岩田のトロンプルイユは、その戸棚や箪笥などが、おなじみのオブジェたちや人形たちの舞台になっているのです。
《箪笥(トロンプルイユ)》 1977年