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岩田榮吉の人物と経歴

 人物点描
  アトリエ その3


岩田が人生後半の10数年を過ごした、パリ市18区オルドゥネール通り189番地所在パリ市立アトリエ村「モンマルトル・オ・ザルティスト」B棟4階の一室は、実際にどのくらいの広さで、制作と生活をどのように両立させていたのでしょうか。岩田自身の書いた略図や書簡の記載、写真などから推定される配置は以下のとおりです。


岩田アトリエの間取り(岩田の書簡付図等に基づく筆者のメモから)
岩田アトリエの間取り(岩田の書簡付図等に基づく筆者のメモから)


全体の広さは約33㎡(およそ10坪)、南面がオープンの廊下、北面が天井までの大きな窓になっており、天井高さは4.8m。北側に大きな窓を配置するのは安定した光を取り込むため、天井を高くとるのは大きいサイズの絵画や彫刻を制作する場合を考慮しており、アトリエ設計の定石通り。バス・キッチン(流し)は室内にありますが、トイレは室外で共用です。

この区画のうち約3分の2を画業のために使い、他の約3分の1が生活スペースでした。写真を見ると雑然としていますが、アトリエ部分では、主な制作を左側から光の入る窓際(図の制作スペース1)で左にオブジェを置くテーブルと右にイーゼルを配して行い、右側からの光を使う場合はその反対側(図の制作スペース2)で行っています。
質素ながら家賃は格安(当時月額150フラン=2021年現在の800~1000円程度)、独居の岩田にはまず申し分のないアトリエでした。制作が一段落した後、特に思うように描けたときには、好きなコーヒーを淹れ、カップを手にバスに浸かって描きかけの自作をドア越しに眺めるのが、岩田の至福の時だったようです。


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