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岩田榮吉の作品

 作品点描
  《赤いセーターの自画像》


本作は1967年に描かれたものですが、この時期の他の岩田作品に比べてやや描き込み不足の感があるうえ、サインも展覧会等への出品履歴もありません。制作中断したままの未完成作と思われます。しかしながら、アトリエの自画像という意匠が共通する1969年作《イーゼルの前の自画像》、1970年作《アトリエ》と何等か連続性のあることは一見して明らかで、三作を一連のものとみて差支えはないと思われます。

1969年作《イーゼルの前の自画像》(人物点描~画家の生き方(その2) 参照)では制作中の姿で、1970年作《アトリエ》(作品点描~失われた時を求めて(その2) 参照)では読書する姿であるのに対して、本作ではまっすぐにこちらに顔を向けています。画面左上から差し込む光が、顔から膝に置いた左手に沿って流れ、左下のテーブルに対して右上は何もない壁面のみ、セーターの赤が強い意志を感じさせます。


《赤いセーターの自画像》 1967年
《赤いセーターの自画像》 油彩/キャンバス 1967年
81.5×65.5cm 横浜本牧絵画館蔵


1967年頃から1970年頃、パリでは「五月革命」、モンパルナスタワーの建設をはじめとする市街地再開発の動きなどがあり、岩田には日本での個展準備、母校芸大教員就任打診への対応などが重なります。あらためて自分を見つめ、考える時間が増えていたことでしょう。ここは一時の気分や甘い見通しに流されず、しっかり考えなければ…という自戒の念もこの自画像には込められているようです。となれば、未完のままなのは、偶々中断が重なりテンションが持続しなかったのでしょうか。それとも、細部修整では満足できないほどイメージがかけ離れてしまったのでしょうか。

<参考>



《イーゼルの前の自画像》 油彩/キャンバス 1969年
100.0×81.0cm 横浜本牧絵画館蔵




《アトリエ》 油彩/キャンバス 1970年
90.9×72.7cm 横浜本牧絵画館蔵




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