人物点描
画家の肩こりと腰痛
パリの年間平均気温は東京より5度ほど低いと言われます。北向きで、高い天井まで届く大きな窓、岩田のアトリエはその写真を見ただけで寒そうです(
人物点描~アトリエその1~3 参照)。そのアトリエで、低めの椅子に掛け、背をまるめて長時間、細密な絵を描いていたらどうなるでしょうか。肩こりと腰痛は画家の職業病かもしれませんが、岩田も例外ではなさそうです。
ところで、肩がこるのは日本人だけ…との俗説があります。骨格も筋肉量も違うから、お辞儀をするなどの慣習が違うから等々の解説もつきます。日本人の画家は随分ハンディキャップを負っていることになりますが、実はそうでもないらしい。例えば英語で stiff neck (首が固い)と言われるものは、肩こりのことではないのでしょうか? つまり「肩こり」という言い方はなくとも、同様の症状は日本人以外にもあるのです。
1970年前後の頃、日本では金属磁気粒の血行改善効果を鍼灸治療流に取入れた商品(商品名:マグレインN、エレキバンなど)が市販され、肩こりや腰痛に効果があると話題になっていました。岩田は、日本の親族あるいは知人から送ってもらったのでしょうか、早々にこれを入手し、親しい画家仲間にも進呈していたようです。それが日本人画家のアドバンテージになったかどうかはわかりませんが。
岩田から、同じアトリエ村の荻須高徳(
人物点描~アトリエ その1 参照)に贈ったマグレインNのイラスト入り添え状。
「
あちこち探しまして、やっと、これだけ出て来ました。1枚づゝはがしてこれを背ぼねの両側とか、腰のいたいところに、お貼り下さい。入浴中も、そのまゝにして、まる2日位たったらはずし、又、はりかえます。‘はり’と同様な効果をもちます。 岩田」