本文へスキップ
岩田榮吉の世界ロゴ

岩田榮吉の作品

 作品点描
  風景素描から(その2:イタリア)

       


日本人の絵描きがこの地に来て、この地の画材を使って、一体何を描こうというのか…という自らへの問いは、明治期以降油彩画を志して渡欧した画家が等しく直面したものでした。自分に都合のいいところだけを、いわば「つまみ食い」する者もいれば、理解力及ばず断片のみ拾い集めるにとどまる向きも多いなかで、しっかりフランス語を勉強してきた岩田には真正面から取り組む心の準備ができていたようです。

イタリアはヨーロッパ文化の本家本元、かつてフランスには芸術専攻学生を対象とする給費留学「ローマ賞」があり、イギリスには貴族子息の卒業旅行「グランドツアー」があって、イタリア詣でが行われました。言語や風習の差を超えてヨーロッパは時代の文化を共有したのですが、その果て二度の大戦という致命的な自傷行動に向かったのです。岩田には自身の来し方に照らし、また、行く末を見極めるためにもイタリア行は必須でした。


《坂道》(画集 参考作品 No.15) 東京芸術大学蔵
《坂道》(画集 参考作品 No.15) 東京芸術大学蔵


2回にわたるイタリア旅行の概要は本サイト「人物点描~1958年のイタリア旅行(その1)(その2)(その3)」のとおりですが、その間の素描を眺めていくと次のような共通点に気づきます。まず、ほとんどが建造物とその存在する環境が、画面中央部に消失点を持つ透視法で描かれています。そして主なモチーフは、塔、アーチ状の構造物、カーブしていく道や線路、岐路、階段あるいは坂道。

これらのモチーフは、岩田の芸大卒業制作《ナルシス》の背景にも登場するもので、引き続き関心をもっていたことがうかがわれます。中でも《イタリア・塔》は構成的な風景になっており、何らか作品の構想にかかわるものかもしれません。新しいものに向かっていきたい衝動が自らに内に膨らみ始めるその時にも、ただ流れに身を任せることなく内省怠りないところが、岩田の特質でしょうか。



《イタリア・塔》(画集 参考作品 No.37)


《踏切》(画集 参考作品 No.42)
《踏切》(画集 参考作品 No.42)



《イタリアの街角》(画集 参考作品 No.33)


ナビゲーション

バナースペース